Skip to main content

定置網漁具に用いられている資材について

定置網とは、沿岸域に漁具を設置し、来遊する魚を誘導して漁獲する漁法である。
日本各地の沿岸域で営まれており、地域の基幹産業となっている。
近年、資材の高強度化や漁業者数の減少が進む中で、定置網に用いられる漁具資材も変化している。本稿では一般的な定置漁具の使用事例をシンプルに紹介する。

定置網操業についての基礎的な紹介は下記の記事を参照されたい。

定置網の操業方法とは?魚価向上の取り組みも紹介

1.網地について
2.ロープについて
3.浮子について
4.土嚢(どのう)について

箱網で漁獲されたブリ約40t

1.網地について

・垣網
垣網とは、運動場から陸側に向けて、直線または曲線状に設置されている1枚の網のことを指す。地域によっては手網、導網とも言われる。
定置漁具に来遊した魚は障害物となる垣網に沿って泳ぐことで、運動場へ誘導される。

定置網漁具の簡易模型

垣網には主に2子無結節網が用いられているが、
近年、走破防止の観点からUC網を用いる漁業者が増えている。
UC網とは網脚の構造が組紐構造になっている無結節網の1種であり、2子無結節網と比較した際に破れが走りづらいことが最大の特徴である。

黒い網、オレンジ色の網は共に垣網に用いられているUC網

垣網の目合は地区によって様々だが基本的に8寸(240㎜)から3尺(900㎜)の網を用いている。垣網を大きい目合に変更した漁業者からは潮抜けが向上することで網への抵抗が減り、破網が格段に減ったとの報告もある。また、漁獲量は従来の尺目(300㎜)の垣網を使用していた際と比較しても大きな変化はない。
特殊な事例だが、島根県隠岐の島の垣網は大型クラゲ対策で960㎜の網地を用いている。

・運動場、昇り網、箱網、魚捕部の網地について

メンテナンス中の箱網
メンテナンス中の箱網

運動場及び昇り網は共に2子無結節網又はUC網の5寸(150㎜)から1尺5寸(450㎜)が一般的である。

箱網を揚網している様子

箱網は2子無結節網の6節(60㎜)から12節(27㎜)
魚捕部は2子無結節網の10節(34㎜)から18節(18㎜)が一般的である。

箱網及び魚捕についても垣網と同様に従来の目合から大目化を進めている経営体もあり、網の汚れの軽減、潮流抵抗の軽減を図っている。

箱網の揚網が終了し魚捕部を吊り上げている様子

2.ロープについて

・側張
側張とは海上に設置してある定置漁具全体を支える枠のような役割を果たしており、定置漁具において重要な要素となる。
定置漁具としてはワイヤロープを化学繊維(ポリエステル、ポリプロピレン等)で被覆したCBR(コンビネーションロープ)やCPR(コンパウンドロープ)が主流だが、対馬地区では古くから40㎜~50㎜のポリエチレンロープを使用している。ポリエチレンロープはCBRやCPRと比較して寸法が変化しやすいが、浮子を減らすことが可能となり、破断した際の補修もし易くなっている。

定置網漁具の側張
最近ではポリエチレン高強力繊維(イザナス)ロープを用いている漁業者も増えている。
高強力繊維ロープは従来のCBRやCPRより軽量であるため浮子を削減できる。また高強力であるためロープ径を細くすることが可能となり、取り回しや補修が容易となる。

リング式網漁具を引き上げる際に多用されるハイブレンドクロスロープ24mm

・網地引き上げロープ
リング式漁具を引き上げるロープとしてはポリエチレンクロス、ハイブレンドクロス(ポリプロピレン特殊モノフィラメント+ポリエステル)などが用いられている。ハイブレンドクロスは耐摩耗性にすぐれ、定置のみならず、底曳、まき網漁業でも多用されている。

箱網部分で用いられているEVA製の浮子

3.浮子について

定置漁具に用いられている浮子は多岐にわたり、部分ごとに使い分けられている。
箱網部分、魚捕部分の浮子は小型で衝撃に強いEVA製が使用されている。

側張に用いられているPE樹脂製浮子

側張、垣網の浮子は円形2つ耳タイプのPE樹脂製浮子などが用いられている。PE樹脂製浮子は衝撃にも紫外線にも強く、防藻材による長時間の浸漬でも性能が変化しにくい。

ABS樹脂製の大型浮子

端先(はさき)、矢引、尻台と呼ばれる部分に設置する浮力が大きな浮子はABS樹脂製の大型の浮子が使用されている。ABS樹脂製の浮子は耐圧性にすぐれている。

小型のPE樹脂製浮子を複数取付ている事例

小さな浮子を複数個仕立て、大きな浮力を持たせている方法もある。

4.土嚢(どのう)

アンカーとして使用されている500kgの大型土嚢

側張、垣網のアンカーを固定する土嚢は50~60kgの製品もあれば0.2~1tの製品もある。重量が軽い土嚢は複数個を使用する必要があるが、人力で作業が可能。大きい土嚢は個数が少なくて済む為、クレーン、デリッキなどの設備があれば作業性が向上する。
近年では生分解性の土嚢も開発され、環境に配慮した資材への関心も高まっている。

あくまで一例だが、定置網で用いられている資材を紹介した。
地域事例を整理・共有することで、資材選定の一助としていただきたい。

の投稿一覧