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【操業のリアル】島根県の底びき漁業

島根県大田市にある和江港を帰港地としてかけ廻し漁業を行っている(有)祐生漁業部の祐生丸に乗船させていただきました。

祐生丸は、2020年8月に竣工した19t型の沖合底びき網漁船です。

本記事では底びき網漁業の基礎知識から、祐生丸が実施している魚価向上や安全操業への取り組みをお伝えします。

目次

  1. 底びき網漁業とは
  2. かけ廻し漁業とは
  3. 祐生丸の取り組みについて
  4. 最後に

底びき網漁業とは

まずは、底びき網漁業についてご紹介していきます。

底びき網漁業とは袋状の網漁具を曳航して海底付近に生息する魚類などを漁獲する漁業です。

許可及び漁法などによってさまざまに分類されます。

農林水産省
統計上の分類
漁船の総トン数 漁業許可 小型機船底びき網漁業
取締規則上の定義
漁法上の分類
底びき網漁業
小型底びき網
15t未満
法定知事許可漁業
手繰第一種 かけ廻し
手繰第二種 ビームトロール
手繰第三種 桁網
打瀬漁業 打瀬網
その他の小型機船
底びき網漁業
オッタートロール
沖合底びき網漁業
15t以上
指定漁業
1艘びき オッタートロール
かけ廻し
2艘びき 2艘びき
以西底びき網 15t以上 指定漁業 2艘びき
遠洋底びき網 15t以上 指定漁業 オッタートロール

底びき網漁業は統計上は「小型底びき網」、「沖合底びき網」、「以西底びき網及び遠洋底びき網」に分類されます。

令和元年の統計では底びき網漁業による漁獲量は約67.5万tと、海面漁業全体の生産量の20.9%程度を占めています。

底びき網漁業における漁法上の分類

かけ廻し漁法

網口の拡網装置を用いずに2本の曳綱によって網口に魚を駆集し、袋状の網で漁獲します。

ビームトロール漁法

網口の間隔を保つ目的でFRPや金属製の張竿(ビーム)を用い漁獲します。

桁網漁法

海底を掘り起こすための特殊な金属枠に袋状の網を取り付け、漁獲します。

オッタートロール漁法

網口を水平方向に広げるための金属板や木板、FRP製の開口版(オッターボード)を用い漁獲します。

2艘びき漁法

2隻の船で曳網することで網口を広げ、漁獲します。

かけ廻し漁業とは

今回は上記の中でかけ廻し漁業が盛んな和江地区を例に挙げて詳しくご紹介します。

前述にある通り、かけ廻し漁業とは、漁船から伸ばした曳綱に連結した袋状の網漁具を曳航する漁業です。

曳綱・網漁具・曳綱の順にひし形に海に投入した後,二本の曳綱を漁船に固定して曳網します。

主に,海底付近に生息している魚類(カレイ類、ハタハタ、沖キス等)や甲殻類(ズワイガニ、エビ類)などを漁獲します。

 

上の動画では、実際にニチモウ㈱研究開発室の水槽にヒラメ、カサゴ、タイ等の幼魚を入れ、模型で魚の駆集状況の再現しました。

動画の通り、魚がロープの動きに合わせて駆集される様子がわかると思います。

日本海のかけ廻し漁業

石川県~島根県(日本海側)のかけ廻し漁業の漁船規模は 15~140tで、乗組員は 2~10人程度です。

同じかけ廻し漁業でも載する漁労機器の種類、能力に違いがありそれぞれ操業方法が異なります。

かけ廻し漁業で使われる漁具

かけ廻し漁業で使用される漁具は、曳綱及び網漁具で構成され、網漁具以上に曳綱が重要視されています。

上図は、曳綱の重量配分表です。

和江港では曳綱に化繊ロープが多く使用されています。

曳綱の中で曲りと称される一番重い部分には、チェーンやCBR(コンビネーションロープ)等を使用しています。

全体的な漁具構成は、鳥取、兵庫、京都に比べて軽い仕様となっており、これは漁獲物の違いによるものと考えられます。

※ロープについての記事は今後詳しく記載しますのでご期待ください。

かけ廻し漁業で使われる3種類の船

かけ廻し漁業では、曳綱の巻き上げ、巻き取り方法の違いにより「手繰船」「リール船」「直巻船」の3種類に分けられます。

和江港は、他地域では珍しくこの三種類の操業方法がすべて存在しています。

この3種(手繰船・リール船・直巻船)はかけ廻し漁業者ならイメージできると思いますが、その他の方には伝わりにくいと思いますので軽く説明させていただきます。

かけ廻し漁業の操業方法

3種ともに投タルから揚タルまで同一の方法となっています。

下写真につきましては一例として左舷出し、反時計回りの事例です。

④以降の工程(寄せ漕ぎ開始)については下記します。

手繰船

船体中央に配置したワーピングドラム(通称:横ドラム、底びきドラム)で曳綱を巻き上げ、ワインダーを介し甲板上にコイルします。曳綱を手で手繰ることから手繰と称されます。

リール船

船体中央に配置したワーピングドラムを介し、リールに巻きあげられます。

投網はトモから行い、揚網はオモテから行われます。手繰船に比べ、省力化操業です。

直巻船

曳綱を直巻ウィンチのみで巻き上げを行います。

投網及び揚網はトモから行われます。現状の操業方法の中で一番省力化操業です。

また、ワーピングドラムを介さないため曳綱へのダメージも少ないとされています。

祐生丸の取り組みについて

浮子綱に伸びの少ないロープを使用

かけ廻し漁業で使用する網漁具は、縮結の変動で網成が大きく変化します。

縮結が多く入りすぎても抵抗が多くかかり、逆に少なすぎても破網の原因となります。

そこで祐生丸では浮子綱に伸びの少ないイザナス®(超高強力ポリエチレン)を使用しています。

そうすることで縮結の変化を抑え、安定した網成を実現しています。

修理しやすい網漁具の設計

底びき漁業に破網はつきものです。

底の様子がわからないため、岩や瀬などで破網することがあります。

網漁具が大きく破網すると網修理完了まで操業ができません。

そこで祐生丸では、各部分を切り離せるようパーツ毎にハガケ網を導入しています。

そうすることにより破網した部分を取外し、替えの部分網を取り付けするだけで網修理が完了します。

上記のように網修理の時間短縮することにより操業回数を減らさずに済んでいます。

また、魚種によって目合の変わるコットエンドも簡単に取り替えすることができます。

鮮度保持への取り組み

祐生丸は冷海水製造装置を搭載し、冷海水槽3基、作業甲板上に配置しています。

漁獲物を船上に取り込んだ直後に、大型の冷海水槽に入れ、漁獲物の初期冷却を行います。

この設備により、後工程である選別から箱詰めの一連の作業中の鮮度劣化・温度上昇の抑制を実現しました。

また、魚槽には保冷機能があり、沖泊り操業時でも漁獲物の鮮度を保つことが可能となっています。

さらに冷海水槽は活魚水槽としても使用可能で、市場のニーズに合わせて必要量を活魚で出荷することもできます。

仲買業者との連携

祐生丸では、グループ会社でもある仲買業者との連携を強化しています。

実際に他船より鮮度が良く、セリでは高値で取引されていると伺いました。

祐生丸が獲った鮮度の良い魚を食してみたい方は、大田市にある(有)丸貴商店様に問い合わせてみてください。

安全操業の取り組み

祐生丸では船外カメラを3台設置しています。

設置個所は甲板トモ側に2台、甲板オモテ側に1台取り付けています。

これは、船長がブリッチにいながら船員の安全を確認できるためです。

また、オモテ側のカメラは360度回転できるようになっており、漁獲物の様子や入網量等を確認することができます。

最後に

前回の記事でも掲載した通り漁業法改正に伴い、今後資源管理が徹底される時代になります。

実際に最近の新聞にTAC(漁獲可能量)魚種を増やしていく計画が公開されていました。

その中に底びき網で漁獲されるマイナーな魚種も増えていました。

また、今後IQ(個別漁獲枠)制度が導入され、各船で漁獲量が決められる可能性が高いです。

そのような状況になると大量に漁獲することができず、少量で如何に魚を高く売るかということを考える必要があると思います。

そこで漁業者の方々に有益な情報を提供し、交換の場としても発展させていきたいです。

ともに水産業を成長産業に変えていければと切に願っております。

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