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【操業のリアル】まき網漁船におけるフィッシュポンプの活用事例

近年のまき網漁業では、機械化による操業の効率化が進んでいる。

従来、魚の運搬船への汲み上げは「アゼ網」という専用の網を用いることが当たり前だったが、フィッシュポンプの導入によって省力化と鮮度保持を同時に実現できるようになった。

今回はこのフィッシュポンプについて紹介するとともに、実際のまき網船団での使用事例を紹介する。

フィッシュポンプとは

まき網漁業において使用されているフィッシュポンプは大きく分けて2種類あり、ボリュート式、押し上げ式と呼ばれる。

国内ではこれら2種のフィッシュポンプが出回っているが、後付けでの設置が比較的容易であることから長崎地区では押し上げ式のカプセルポンプが主流となっている

ポンプのサイズは8インチ、10インチ、12インチの3種類があり、サイズによって魚の吸い上げスピードや吸い上げられる魚のサイズが変わってくる。

8インチのカプセルポンプ。本体重量100kg。写真の通り設置に場所を取らない。

こちらの写真は8インチのフィッシュポンプである。

おもに小型のイワシ類、エササバ等の吸い上げに用いられているが、吸い上げスピードを遅くすれば15センチ程のサバも吸い上げることもできる。

19tの船団だけでなく10t未満の船団でも使用されており、あらゆる漁船における魚の取り上げの省力化に寄与している。

10インチのカプセルポンプ。本体重量200kg。

こちらの写真は10インチのポンプ。

吸い上げられる魚の大きさは8インチと大きな差はないが、吸い上げ能力が各段に高くなっている。

12インチ 本体重量420kg

こちらの写真は弊社の元営業部長と12インチのフィッシュポンプである。

魚の密度にもよるが、20センチ以上の魚も吸い上げ可能となっている。

フィッシュポンプ規格:水の吸い上げ量

8インチ 5t/分
10インチ 8t/分
12インチ 20t/分

参考までに水の吸い上げ量を上記の通り。

魚を傷つけずに汲み上げるためには、海水と魚の割合が重要となる。

実際の現場ではポンプの吸い上げ能力を魚の密度に合わせて細かく調整したり、魚捕内の魚が集まっている部分にポンプを移動させるなど、さまざまな工夫がなされていた

省人省力化への効果について

続いては、フィッシュポンプを用いた場合の省力効果について紹介しよう。

アゼ網使用時は4名で行っていた作業でも、フィッシュポンプを用いることで魚を汲み上げる際の本船側の人員は1名ですむ場合もある。

*人員配置は地域、船団毎に少々差があります。

なおこの場合、運搬船側の人員も2名程度まで削減できる。

魚を汲み上げる以外にも様々な作業で人員が必要になるものの、魚の汲み上げ作業自体は確実に「省力化」される。

19tまき網船団の事例

ホースは柔軟性に富んだゴムホースが使用されており、本船に搭載する際に場所を取らない。

実際に10インチのフィッシュポンプを使用している長崎県19t巻網での事例を紹介する。

上の写真のように本体の吸い上げ部を魚捕内に投入し、ホースを伝って運搬船へ魚を汲み上げる。

フィッシュポンプの本体は網船本船に設置されていることが多く、本船に設置することで船団内のすべての運搬船へフィッシュポンプを用いた魚の汲み上げが可能となる。

フィッシュポンプで水揚げされた小型のマイワシ

今回主に漁獲された魚は小型のマイワシ。

吸い込みの速度を計測したところ、5分ほどで8t程度の魚が積み込まれた。(10インチのフィッシュポンプを使用)

同船団ではポンプの吸い上げ能力は6~7割に抑え、魚の鮮度を高める工夫が成されている。

水と魚は運搬船側のセパレーターによって分けられ、魚のみが魚槽に入っていく。

吸い上げ部本体は水面下8~10m程度(ホースの長さによって調整可能)まで沈めることができ、沈んでしまう弱りかけの魚を先に吸い上げることができる。

従来のアゼ網を用いた場合、フィッシュポンプとは対象的に水面近くの魚から取り込む形となる。

結果として最初に弱った魚は最後まで魚捕内に残されてしまい、傷が付きやすかったり鮮度が落ちやすくなってしまう。

このようにフィッシュポンプを用いることで、魚の鮮度保持、乗務員の省力化を同時に図ることができる。

設置の際に必要なことは「ポンプと油圧を繋ぐ油圧工事」、「切換え弁の設置」、「ポンプとホースの設置場所の確保」のみとなる。

操業中にポンプを取り扱うため、海上クレーンがあることが望ましいが、デレッキ索で取り回しを行っている船団もある。

漁業の機械化は日々進んでおり、今回紹介した事例のように機械化による省力化が積極的に行われてる。

私たち西日本ニチモウでは、今後も漁業者の仕事が少しでも安全で楽に操業できる資材の提供を実施していきたい。

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