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【操業のリアル】長崎県まき網①

長崎県には50〜60隻の中小型まき網船があり、まき網漁業が盛んに営まれている。

一般的なまき網船団では獲った魚は沖で氷締めし、鮮魚や加工品原料、冷凍エサとして取り扱われることが多い。

そんな中、当地区には漁獲した魚を活魚で持ち帰り、販売まで行っているまき網船団がある。

今回、カタクチイワシの活魚での漁獲、販売に力を入れている暁星水産有限会社を訪問し操業に立ち会った。

目次

  1. 暁星水産㈲について
  2. 特徴的な装備について
  3. カタクチイワシの活魚での漁獲、出荷について
  4. 最後に

暁星水産㈲について

暁星水産㈲は長崎県で操業を行っている中型まき網船団であり、本船は19tと15tの2ケ統の船団を所有している。それぞれの船団を時期に合わせて使い分けている。

年間を通じて主にアジ、サバ、イワシ類を漁獲しており、中でも2~5月はカタクチイワシを漁獲しカツオ一本釣り漁船への活エサとして販売している。

無動力活魚運搬船の様子

また無動力の活魚運搬船(以下無動力船)も所有しており、漁獲した活魚はこの無動力船へ積み込んで運搬する。

さらに活魚用の生簀として、1辺9mの8角形生簀を18台、1辺10mの角型生簀を20台所有しており、イリコ加工業まで行うなど、自社のまき網漁業を軸にさまざまな事業を行っている。

特徴的な装備について

ISANAの導入

操業時のISANAの画面。魚探・ソナーの映像共有機能を使用している。

ISANAとは沿岸まき網では一般的になりつつあるICTを用いたシステムである。

タブレットを使用して、①魚探ソナーの映像共有、②位置関係の把握、③漁獲記録が可能。

①②の情報共有機能によって船ごとの集魚状況が一目でわかるため、本船による魚群の点検作業は不要となり操業の効率化を実現している。

また③の漁獲記録は漁獲した地点、魚種、漁獲量、魚のサイズを記録可能であり、従来の手書きの記録に替わる機能となる。

今回の乗船においても、定期的にISANAをチェックしながらの操業が行われていた。

船団内の情報共有を密にすることが出来るため、操業に欠かせないものになっている。

リモコン式目指さり防止灯

有線の遠隔操作可能なリモコン式目指さり防止灯。重量が重い為、デリッキでの投入となる。

暁星水産では、上の写真のようなリモコン式目指さり防止灯を採用している。

こちらは小さな光量の灯具を搭載しており、有線で操縦可能な仕様となっている。

灯船の離脱後、魚捕に投入したリモコン式目指さり防止灯。灯船には及ばないが目刺さりを軽減させる程度の光量を持っている。

集魚、投網が終了した後の魚締め終盤において中心灯船が魚捕から離脱すると、イワシ類は灯を見失って網の中で散り散りになり目刺さりを起こしてしまう。

中心灯船の離脱後にリモコン式目指さり防止灯を投入することで、イワシ類の目刺さりを軽減させることができる。

裏漕ぎ綱

裏漕ぎの様子

これまでの記事でも紹介してきた裏漕ぎ綱だが、今回の本船ではオモテ側の又綱はワイヤロープ、トモ側の又綱はウルトラインD-8(超高強力繊維ロープ)の30㎜を使用している。

従来はナイロンクロス50㎜を使用していたが、ウルトラインD-8 30㎜への置換によりロープ重量は3分の1となり操作性が向上したという。

裏漕ぎ本綱はハイブレンドクロスL 38㎜を使用している。

裏漕ぎ又綱に使用されているウルトラインD-8 30㎜。従来はナイロンクロス50㎜を使用していた。ウルトラインD-8とはイザナス(旧ダイニーマ)を使用した超高強力繊維ロープである。

パースラインのブリッジでの制御

パースラインを操作する為の機器。ブリッジ上部に位置するゾンデ(深度計)を確認しながらの操作が可能。

パースラインを機側及びブリッジ内でも操作可能となっている。

不足の事態に備えてパースの機側には作業員が配置されているがブリッジ内の船長がゾンデ(深度計)の水深を見ながら細かな調整を行っていた。

デジタル表示で1分間当たりの回転数が表示され、パースラインの巻き上げ速度を確認出来る。

漁礁や瀬が多い漁場で操業する際には大変役立っているとのこと。

カタクチイワシの活魚での漁獲、出荷について

魚捕部に接近した無動力船

漁獲した活魚は、漁場まで曳航している無動力船へ積み込んで運搬する。

無動力船の側面には開閉可能な魚の投入口があり、投入口の周りには浮子(浮き)が取り付けられるようになっている。

無動力船の側面の開閉口

この投入口とまき網漁具の魚捕部分を繋げることで、漁獲した活魚を無動力船に直接流し込む。

魚の誘導は本船と無動力船の船上灯を消して、無動力船の魚槽内にて水中灯を灯すことで行う。

カタクチイワシは灯に誘導されて網の中から無動力船の魚槽へと移動する。

船上灯を消して、無動力船の生簀部分のみを明るくしている状態。

積み込み作業は効率的に行われており、投網から活魚積み込み完了時までの時間は50~60分ほど。

時間が掛かりそうな印象を持っていたが、一般的なアゼ網やフィッシュポンプを用いた鮮魚の積み込みと比べても大差は無かった。

カタクチイワシの積み込みの様子。積み込みはバケツリレーで行う

夜明けと共に操業は終了し、漁獲した活魚の生簀への投入作業、あらかじめ保管していたカタクチイワシの出荷作業が始まった。

漁獲した活魚(カタクチイワシ)は一定期間生簀で落ち着かせることでカツオ船へ積み込んだ後の生存率が変わってくるため、漁獲した活魚は一旦生簀へと移される。

この日は19t、60t、150tと、大小様々な4隻のカツオ一本釣り漁船がカタクチイワシの購入に訪れていた。

生簀に取り網を投入し、取り上げたカタクチイワシを迅速にバケツリレーでカツオ船へ積み込んでいく。

購入の単位は1バケツ(海水含め約6kg)であり、カツオ漁船1船がこれを100~200バケツ購入していた。

暁星水産の船員様に加え、カツオ漁船の船員様総出の共同作業であった。

最後に

今回の乗船で最も印象的だったのは、魚の付加価値を高める船員様の努力であった。

暁星水産では通常のまき網操業が終わった後に、活魚の出荷作業、漁獲した活魚の生簀への入れ込み、生簀の整備を行う。

これら一連の作業は正午まで続いており、実際に立ち会うことでカタクチイワシの活魚販売の大変さが感じられた。

魚価の向上を図る為に「活魚を扱うことによる魚価の向上」「鮮度保持による魚価の向上」等々の取り組みを推奨する声があるが、これらの取り組みは決して楽なものではない。

しかし、掛けた労力は高い付加価値を魚に与え、金額となってかえってくる。

カタクチイワシを鮮魚で販売した場合と、今回の様に活魚で販売した場合では1kgあたりの単価は数十倍も変わってくる。

作業にあたっている方々は皆「操業に加えて活魚を扱うのはかなり大変。」と言っていたが、顔は達成感からくるであろう笑顔に溢れていた。