長崎県五島地区で大型定置を営む(有)有福水産に訪問した。
同社では獲った魚の加工・販売だけにとどまらず、畜養、活魚運搬まで手掛けている。
今回は同社が行っている魚の価値を高める取り組みについて紹介する。
目次
鮮魚ボックス
同社の定置網で漁獲された魚を、鮮魚ボックスとして出荷している。
いずれも活〆が施されており、鮮度は抜群だ。
注文者は個人のみならず、居酒屋からのリピートが多いという。
出荷先も北海道、大阪、東京、山口県、福岡等々、全国各地からの注文があるそうだ。
鮮魚ボックスは加工等の手間を掛けずに、新鮮な状態で魚を届けることができる。
また買い手は旬の魚をすぐに受け取ることができ、季節も感じられ、毎回何が入るかわからない楽しみもある。
加工品の販売
同社ではかねてからの顧客の要望に応えるため、2021年に加工場を新設し加工品の製造、販売もスタートした。
商品はフィレ、干物、鍋用の切り身、茶漬けなど幅広い商品を扱っている。
今回の事例の中でフィレ加工は「一次加工」、干物、茶漬け等の加工は「高次加工」とよばれる。
水揚げ量が限られた状況で付加価値を高めていくためには、より手間をかけた高次加工が必要となってくる。
一次加工品「フィレ」
フィレにする魚は全て活〆、脱血、神経締めが施されている。
顧客の要望に応じて、ドレス(頭を落として内臓を取った状態)を製造することもある。
また、フィレの裏表の水分、細かな血合い、汚れを丁寧にふき取っている。
この作業は意外と手間が掛かる作業だが、このひと手間で買い手に届いた際の魚の状態が大きく変わってくる。
適切な処理(脱血、神経抜き)を施された魚は美しく、美味しい魚に仕上がる。
3枚におろされさているため、魚を捌くことに不慣れな消費者でも使い勝手がいい商品だ。
切り身にして焼くもよし、煮るもよし、皮をひいて刺身にしても美味しい。
ここで脱血、神経抜きについて記載しておく。
脱血は魚の血を抜くことであり、魚の臭みを抑える事に繋がる。
方法はいくつかあるが一般的には鰓(エラ)に繋がる血管を切断して血を抜く。
新鮮な魚であっても血が抜かれていなければ血生臭い身になってしまう。
神経抜きは、魚の脊髄を破壊し生態活動を完全に停止させることをいう。
魚の中骨周辺に通っている脊髄に針金を通して破壊する方法が一般的である。
これを行うことで、魚のうまみ成分の元であるATPという物質の消費を抑え、死後硬直の開始も遅らせることができる。(詳しくは別の記事を作成予定)
魚を3枚に下ろした後に素早く真空作業を行う。
プシュー!という音とともにすばやく真空フィレが出来上がる。
真空パックしたあとは、たっぷりの氷とともに梱包される。
溶けだした氷水が魚に触れないため、鮮度保持に繋がっている。
真水が鮮魚に一定時間触れてしまうと、浸透圧により身に水分が含まれてしまい、身がゆるんでしまう。
真水で汚れやヌメリなどを取り除く際は、手早く洗った後にキッチンペーパー等で水分をよく取り除く必要がある。
高次加工品「干物」
居酒屋から「すぐに客に提供できる商材がないか?」問われたことをきっかけに、干物の販売も開始した。
現在では居酒屋だけでなく、一般消費者からの注文もある。
居酒屋も一般消費者も魚の処理、調理の手間を少しでも省きたいというニーズがあるのだろう。
同社の干物は冷風乾燥機を用いているため、鳥や虫の干渉がない安全安心な製品をつくれる。
ヒラマサの干物やカマスの開きなどが製造されているが、いずれも濃過ぎずほどよい塩加減で、魚の旨味を感じられる。
高次加工品「茶漬け」
同社の一番人気商品がこちらの茶漬けだ。
1袋に切り身(漬け)が10枚入っており、とても食べ応えがある。
茶漬けだけでなく、漬け丼としてもおいしくいただける。
なお入荷次第すぐに売れてしまうことが多く、現在は品薄状態となっているという。
急速冷凍設備の導入
全て活〆、血抜きが施された原料を使用し、急速凍結器(ブライン凍結器)で凍結されている。
冷凍製品であるクエの切り身やタイ・アジ茶漬けは、マイナス30℃の冷凍庫で保管されている。
その他の取り組み
短期畜養
同社では角型生簀、円形生簀を所有しており、定置網で漁獲された魚を短期畜養し出荷調整を行っている。
獲れた魚を獲れた日に必ず水揚げせずとも生け簀で一時保管できるため、市場の価格を確認しながら良い値段がつくタイミングでの水揚が可能となる。
また畜養することで急な出荷、時化の日の出荷にも対応することもでき、魚の安定供給にも繋がっている。
これらの蓄養された魚は、必要に応じて加工、鮮魚ボックスにも使用している。
活魚運搬
離島からの鮮魚出荷のみではなく、長崎魚市への活魚運搬も行っており魚の単価向上の取り組みを行っている。
最後に
近年水揚量、水揚金額が減少していく中で、魚の価値を高める取り組みは必須である。
今後はひとつひとつの取り組みだけではなく、さまざまな施策を組み合わせていくことや、さまざまな業界関係者と連携することが重要になってくるだろう。
われわれ西日本ニチモウは、今後もこのような取り組みを行う方々のサポートを少しずつでも実施していきたい。
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