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【操業のリアル】7.9t型まき網の操業形態を紹介!省人化を極めたスタイルとは

今回は長崎県にて操業している7.9t型まき網船団を訪問した。

当船団は極限まで省人化された操業を実現している。

本記事ではこの船団がどのような形態で、漁具を使用して操業しているのか紹介していく。

目次

  1. 7.9t型まき網について
  2. 極限まで省人化された操業スタイルとは
  3. 省力化を実現する設備
  4. 漁具について
  5. 最後に

7.9t型まき網について

7.9tまき網は、「2船式1そうまき網漁業」という許可の元、下記の船団構成、人員配置でまき網操業を行っている。

  • 本船(運搬船および灯船を兼ねる)人員2名
  • 本船に付属する投網船 人員なし
  • 灯船(運搬船および探索船含む) 人員1名
  • 同上 人員1名

合計4隻、4名

7.9tまき網の操業方法

7.9tまき網の投網の流れ 本船は動かず投網船が投網を行う。

7.9tまき網は、19tまき網とは投網方法が大きく異なる。

本船団では投網船に網が搭載されており、投網船が本船のトモ(後ろ側)から投網を開始する。

投網船は、本船に大手端(浮子綱、岩綱、環綱の端)を渡し、後進しながら円を描くように投網していく。

本船はアンカーで固定しているので、操船をする必要はない。

本船に付属する投網船

投網船は投網後に裏漕ぎ(本船を引っ張る作業)を行う。

裏漕ぎ終了後、投網船の人員は本船へ乗り込み、揚網、魚の取り込みを助勢する。

本船団では船から船への人の移動が迅速に行われ、最小限の人員での操業が成されている。

まさに極限まで省人化された操業といえよう。

集魚後の流れ

続いては、集魚後の操業の流れと人の動きに関して説明する。

通常の19tまき網のように網の中に残る中心灯船はなく、ラジコン水中灯が中心灯船の役割を果たす。

灯船①②の集魚が終了した時点で、それぞれの船の魚を全て本船に集約し、この魚群をラジコン水中灯に維持する。

 

本船での魚の集約が終了すれば、灯船の人員は不要となるため、投網船が灯船の人員を迎えに行き、本船へ人を移動させる。その際、無人となった灯船は本船へ係留する。

本船の人員が3名揃った時点で投網の準備が完了し、投網を実施する。

操業の省力化のための設備

前途のとおり、本船団では合計4隻、4名という極限の省力化に成功している。

この操業スタイルを実現するために、実際に導入されている設備を詳しく紹介していこう。

3本ローラーの揚網機

トモに設置されている3本ローラーの揚網機。

本船団では、まき網では珍しい揚網機を使用している。

こちらは3本ローラーとなっており、通常は刺し網で用いられている揚網機を流用したものだ。

従来の揚網機よりも揚網力が格段に向上し、揚網時の省力化に寄与している。

従来の揚網機:シングルである為、揚網力が不足している際は人力を加える必要があった。

従来のシングル型の揚網機では、揚網力が不足する場面が多々発生しており、多大な労力が掛かっていた。

揚網を省力化できる何かいい方法は無いかと船頭が考え続け、かつて刺し網漁で使用していた3本ローラーの揚網機を流用する方法を考案したとのこと。

ピンを取り外すことで旋回が可能

揚網機の根元のピンを外すことで旋回が可能であり、操業の状態に合わせて網が船に入ってくる角度を変えることも可能となっている。

旋回機能により無理な角度で揚網することがないため、揚網スピードの向上だけではなく、破網防止の効果もある。

3本ローラーの揚網機を使用することにより、揚網力が向上し、従来は人の力が必要だった揚網作業は揚網機のみの力で行うことが可能となった。

また、従来の揚網機よりもローラー幅が広いため、浮子と岩のズレが抑えられ、網地のスリップもなくなったという。

19tまき網向けも開発中

19tまき網船向けデルタワインダ―

今回紹介した揚網機は7.9tまき網で使用されているもので小型だが、マリンハイドロテック㈱にて19t型まき網に向けて3本ローラーの揚網機 「デルタワインダー」が開発されている。

こちらは既に大型まき網では導入実績が多数ある揚網機(デルタワインダー)を19tまき網向けに小型化したものである。

網地をスリップさせずに揚網が可能であり、揚網スピードの向上、浮子方、岩方のズレを解消させることが期待されている。

また、旋回に加え傾転も可能であり、3本ローラーをそれぞれ独立に駆動させることも可能となっている。

重要な役割を果たす「ラジコン集魚灯」

小型のラジコン水中灯:集魚後の魚群の集約に使用する。

本船団では、19tの一部の船団でも用いられている小型のラジコン水中灯を本船団でも使用している。

有線で操縦可能になっており、前進のみが可能。バックする際は配線に沿わせたロープを手繰る。

揚網時には灯船の人員が全て本船へ乗り移るため、本船から動かせるラジコンは中心灯船として重要な役割を果たす。

結果として灯船を1隻(人員1名)削減することに繋がっている。

19t船団ではラジコン水中灯は魚の目指さり防止として用いられているが、本船団では操業終盤の魚群の維持を行い中心灯船としての役割を果たしている。

漁具について

パースダビットは小型であり、ステン製となっている。

パースウインチは1機であり、片巻きとなっている。

パースラインは繊維ロープ、パ―スリングはステンリングを使用している。

パースラインは通常のまき網とは異なり、繊維ロープを用いておりパ―スリングはステン製となっている。

ステンリングの耐久性は高く不測の事態で変形したり、紛失しない限り20年以上使用可能である。

パースラインであるテトロンクロスの耐久性は半年程度となっている。

19tまき網ではパースラインはワイヤロープ6×24、6×(S)24が主流だが耐摩耗性、強度に優れた繊維ロープが開発されれば繊維ロープへの代替も可能かもしれない。

デレッキには高強力繊維イザナスを用いたウルトラインD-3が用いられている。

従来よりも部径が細くなり、ロープの伸びが少ないため、ものを吊った際の安定性が向上したとのこと。

最後に

今回紹介したまき網は7.9tであり小型であるが、使用している油圧機器、漁具は大中型まき網の省人・省力化に寄与するヒントが秘められているように感じる。

今後も漁業種を限らず様々な漁具漁法を紹介していきたい。

※デルタワインダについては新型コロナウイルスの影響が落ち着いた段階で、まき網シンポジウムでの紹介を予定しております。製品化されたデルタワインダをお楽しみに。

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