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カキ養殖から垣間みえる省力化の先。

「人手不足」という言葉を今も昔もよく聞く。人口が減少することはわかっていたし、この状況は数年前から分かっていた。その解決方法として省人、省力化はもっとよく聞く言葉。私たちも水産業界において、魚の取り込み方法の検討や漁具の軽量化に取り組んできた。

しかし、省力化の限界を感じているのも正直な話。そこで、よく考えて欲しい。省力化とは、実施している作業に対しての省力化。今では「作業自体」そのものの見直しをすべきステージに来ていると感じる。

前置きが長くなりましが、今回はそんなお話です。

大分県の佐伯市からフェリーで数分、大入島の合同会社新栄丸を訪ねた。新栄丸の宮本さんはニュージーランドのフリップファームを導入して、画期的なカキ養殖を2020年から始めている。

収穫されたカキ。通常のカキと違う印象。

宮本さんにカキ養殖の経験はなく、カキ養殖に対して先入観がなかったことも導入のハードルを下げたかも。

日本のカキ養殖

日本のカキ養殖方法は、垂下方法がメイン。ホタテ殻にカキ幼生を付着させ、その後はホタテ殻ごと海中に沈めておく。途中でカゴに入れ替える方法もある。

カキがついたホタテ貝。

いづれにせよ付着生物がカキ自体やカゴにつくので、取り上げて掃除する必要がある。収穫時にはカキ殻についた生物の除去も必要である。

付着生物を除去するハンドクリーナー、カゴを洗浄する装置もあるので、その作業の省力化は進んでいる。

ホタテ貝をつるす筏。竹自体も入手しづらくなった。

出荷形態は「むき身」がメイン。打ち子さんと言われるカキの身を取り出す作業は技術が必要で、なかなか機械化は難しいと聞く。

そんな従来のカキ養殖と大きく異なる技術が海外で生まれ、日本でも採用されている。

海外の新しいカキ養殖方法

新栄丸さんの養殖漁場ではバスケットを使用する方法が導入されており、海面でカキを干出させる方法を採用している。干出は一定期間カキを水面上にさらす手法で、カキの成長促進、耐久性強化などの効果もある。さらに、干出することで、カゴとカキ自体に付着生物がほぼつかない。

手前がカキが干出した状態。その上はカキが浸漬している状態。

なんと、付着生物の除去作業自体を無くしている。

しかし、干出させる作業が増えるのでは?と思いますよね。では干出作業を次の動画で見て欲しい。

理にかなったというか、すべてシンプルだし、とても驚いた。バスケットはフロートと一体となっており、フロート部を下にするとバスケットは水面上に干出される。それをひっくり返すと、バスケットは水中に入る。

非常にシンプルの連続。

さらにカキ自体にもいいことが。かごの中でカキはコロコロと転がるので、ぶつかり合うことで付着生物がつかない。カキの掃除作業自体がほぼ不要となる。

さらに、干出によって貝柱が強くなり、むき身ではなく、長持ちするカキとして殻付きで出荷するという。なんと、打ち子さんの作業自体も削除されている。

出荷先は「ドバイ」。国内市場との競合も削除されている。。。

サイズ選別後、ドバイへ旅立つ。カキ本人も驚くだろうな。カキ君「え?ここどこなん?」

働かないことにも意味がある。

お邪魔したカキ養殖会社は土日が完全に休み。反転作業は2日に一回程度だそうだ。生き物を相手にする仕事においては、非常に休みが多い印象を受ける。

選別後の投入作業。左右の人はさぼりではなく、カゴの開け閉め。

水産業において省力化は必要であるが、その手法自体を見直す必要があるのではないか。水産業界においては漁業法の改正もあり、手法もどんどん変わってくるだろうと期待しているし、その活動を起こしていきたい。

 

イノベーションとは、これまでの技術を一掃してしまう力を持つという。そのイノベーションは、楽をしたい、新しい価値を創出したい気持ちから発生するような気がする。

アイデアは働いていない心に余裕がある時間に湧いてくると思う。

私のオフィス。ではない。

GDPで日本を上回るドイツでもそんなに働かないらしい。今後、人手不足によって従来の作業ができなくなる事象が発生すると思う。そんな時は、無理をせず、立ち止まってみれば新しい視点がでてくるかもしれない。

川も意外な視点を得られる漁場です。

そんなスタンスで、私も従来の取り組みを見直しイノベーションを起こしていきたい。なので、「働かない時間」を確保しますが、決して冷ややかな目を向けないでください。

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