かけ廻し漁業とは、底びき網漁業の1種です。
今回は、かけ廻し漁業を行う沖合底びき網漁船(以後、沖底船)の操業方法をご紹介します。
沖底船の人員構成
沖底船の乗組員の人員構成は、船の大きさで異なります。
例として、
- 19t:6人前後
- 40t:6~8人
- 100t:8~12人
で操業を行います。
基本的に漁獲物が満船になり次第帰港します。
※沖底船では、外国人研修生が多く活躍されています。
操業の流れ
かけ廻し漁業の大まかな流れとして、①~⑤があります。
- 操業の準備、漁場へ移動
- 打ち廻し(投タル~投網~揚タル)
- 寄せ漕ぎ開始
- 揚網
- 選別、次操業準備
操業の準備、漁場へ移動
漁獲する魚種に合わせ、網漁具を選定し出港します。
沖底船は、魚網、ホタル網、カニ網、カレイ網等さまざまな種類の網漁具を有しています。
その中でも筆者が特に特徴的と感じるのは、ホタル網とカニ網の2種類です。
ホタル網について
ホタル網は、ホタルイカを漁獲することを目的としています。
ホタルイカは、海底から少し浮いた場所に生息しているため、網口が高い網漁具を使用する傾向にあります。
また、ホタルイカ以外の魚種が漁獲されると、ホタルイカが傷つき商品価値が落ちてしまいます。
魚種に合わせた沈子
グランド(沈子)構成は、スカート式と吊り岩式等を採用しています。
スカート式は通常使用する網漁具と比べ、グランドと取り付ける網地の目合を大きくし、かつ掛幅の多い網地を使用します。
これにより混獲されてしまう底モノ(クモヒトデ等)の漁獲割合を減らすことができます。
吊り岩式は、グランドと網地を30~40cm程度の間隔を開け取り付けています。
この構造も底モノ(クモヒトデ等)の漁獲を減らすことにつながります。
グランドも通常使用する沈子重量よりも軽い仕様になっています。
荒手先に使用する手木も、鉄製のモノから木製の手木に切り替える漁業者もいます。
通常の漁具よりも着底具合を軽くすることで底モノが入りずらい漁具になっています。
このように、一連の特殊な仕立によって選択的な漁獲が可能となっています。
カニ網について
カニ網は、ズワイガニ(松葉ガニ)の漁獲を目的とする網漁具です。
ズワイガニは、海底に生息しているため、網口の高さはあまり重要視されず、グランドの着底が重視されます。
そのため、グランドは通常使用する網に比べ重い傾向にあります。
ズワイガニ漁は特に資源管理を重視しており、稚ガニの入網を減らすため、網漁具全体の目合を大きく設定しています。
目合を大きくすることは他魚種の混獲防止、漁獲物の傷みの抑制につながります。
打ち廻し
船体後方(トモ側)より、曳綱と連結されたフロート(ブイ、タル等)を海へ投げ入れます。
航跡が菱型状になるように先手側のロープ(曳綱)を打ち廻し、その後網漁具を投網します。
投網した後に後手側のロープを打ち廻し、最初に投入したフロートを回収し、漕ぎ綱と連結し、寄せ漕ぎを開始します。
※タル(フロート)には、パラフロートを用いる船が多い傾向にあります。