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【ロープ選定シリーズ】ロープの伸びについて

先日はロープ選定に必要な10項目を【ロープ選定シリーズ】にてご紹介しました。

今回はロープの伸びに焦点を当て、より詳しくご紹介していきます。

※今回お伝えする”伸び”とは力が掛かった時に発生する伸びです。経年劣化による伸びではありません。

目次

  1. ロープの素材による伸びのよる違い
  2. ロープの伸びと引張強力の関係について
  3. 今後の漁具資材紹介について

ロープの素材による伸びの違い

ロープの引張試験時の様子 左:力を掛ける前 右:切断前

ロープを選定する際は引張強力だけを見る方も多いと思いますが、伸びも重要な項目です。

これからのロープ選定で伸びを重要視してしまうような伸びの重要性を説明したいと思います。

破断試験の映像

まずは破断試験の様子をご覧ください。

最も伸びが少ないメガトン-Xと汎用品として最も伸びのあるナイロンクロスロープを比較してみます。

ロープの破断映像で比較する事で伸びの違いが明確にわかると思います。

メガトン-X 16mm

  • 規格強力:14.0tonf
  • 破断伸び:6.7%(無荷重時より)

ナイロンクロスロープ 28mm

  • 規格強力:14.3tonf
  • 破断伸び:50.2%(無荷重時より)

切れる際のロープの挙動にも注目してみてください。

ナイロンは破断の瞬間に大きく跳ねているのがわかりますが、メガトン-Xは破断するだけでほとんど動いていません。

跳ねているのは伸びる事で蓄えたエネルギー(破断エネルギー)を切れた瞬間に放出しているためです。

破断エネルギーとは衝撃荷重への耐性のことで、詳細は後述します。

伸びが大きなロープの使用事例

まき網の裏漕ぎに用いられているスーパートクラインクロスロープ(ポリエチレン製)。

次に伸びを考慮した使用用途について事例を紹介します。

伸びが大きいロープは、衝撃を緩和してくれる機能があります。

そのため、ナイロン製ロープを係船索や曳航策として使用する例が多いです。

また適度な伸びがありつつ、海水に浮くポリエチレン製ロープも用いられます。

伸びが少ないロープの使用事例

アゼ網引き上げ用として使用されている、イザナス®を用いたメガトン-X。伸びが少なく、超高強力。

伸びが少ないロープとして、代表的なロープはイザナス®を用いたロープです。

ロープが伸びないことで、ウインチなどの力がすぐに対象物に伝わるというメリットがあります。

デリッキ索に用いられているメガトン-X 伸びが少なく超高強力。

伸びの少ないロープはウインチの他にも、デレッキ索、裏漕ぎ又綱、大手ワイヤの代替としての用途にて使用されています。

素材による伸びの違い

これまでの内容からロープの伸びは素材によって大きく異なることを理解されたと思います。

ここからは破断までの伸びの目安を、製品ごとにお伝えします。

メガトンX

伸び:約10%弱

超高強力繊維イザナス®を使用しており、伸びにくい材質です。

スーパートクラインロープ

伸び:約40%

こちらはPE製のロープです。

温度や使用期間よっても伸びは異なります。

基本的に使用期間が長くなれば、伸度が落ちてきます。

タフラインロープ

伸び:約35%

ポリプロピレン製のロープで、軽くて伸びにくい材質です。

ポリプロピレン製ロープ(スーパータフラインなど)の場合、材質を変えずに伸びを抑える方法として、ビガー加工(延伸熱処理)があります。

通常品とビガー加工の比較 スーパータフラインロープ(ポリプロピレン製)

熱処理を延伸(引っ張りながら)を掛けながら行うことで、初期伸び、構造状発生する伸びを抑えられます。

テトロンロープ

伸び:約35%

ポリエステル製のロープで、沈降性がよく伸びにくい材質です。

ナイロンロープ

伸び:約50%

汎用ロープの中で最も引張強力、伸びのある素材です。

ロープの伸びと引張強力の関係

素材ごとに伸びが違うことがわかったところで、ロープの伸びと引張強力の関係について解説していきます。

例として、ロープの伸びと引張強力の関係をグラフに示しました。

縦軸が引張強力で横軸が伸びを表しています。

グラフ内の線で囲った部分(三角形)の面積を破断エネルギーと呼んでいます。

ロープは同じ引張強力としています。

同じ引張強力でも、伸びの違いで破断エネルギーが大きく変わる事が分かるでしょう。

この例では伸びが大きいロープAの破断エネルギーは、伸びの小さいロープBの5倍となります。

同等引張強さで伸びが大きいロープAと伸びが小さいロープBでけん引した場合、Aは荷重による衝撃(エネルギー)をロープが吸収しますが、Bは荷重による衝撃をロープが吸収出来ず、規格の引張強力以下で切断に至る場合があります。

特に係留ロープ、曳航ロープ、まき網の裏こぎロープなどで衝撃荷重が発生しやすく、選定の際には引張強力と同様に伸びが重要になります。

共に12mmの物性グラフ

実際にロープ直径を揃えた場合の物性を比較してみます。

メガトン-Xとナイロンクロスロープでは、同等直径だとメガトン-Xの引張強力がとても大きいことがわかります。

しかしメガトン-Xの破断エネルギーを100としたとき、ナイロンクロスは267です。

このように衝撃荷重がかかる用途には、引張強力が高いだけでは最適な選択とはいえないことがわかるでしょう。

今後の漁具資材紹介について

ロープの能力となると価格、引張強力、耐摩耗性ばかりに目がいきがちですが、伸びも重要な能力です。

この記事を見ていただいた事で、ロープにおける伸びの大切さを理解できたと思います。

今後も【ロープ選定シリーズ】として各項目の詳細を記事にしていきますので、適切なロープ選定のお役に立てば幸いです。

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