2022年5月、島根県の底引き網漁のシーズンが終了しました。
昨季より新造船を導入した祐生漁業部さんに結果を伺ったところ、非常に好調な水揚げをされておりました。
今回は島根県の現状を踏まえながら、同社の水揚げの向上に至った秘訣を詳しく紹介します。
目次
島根県の水揚げ状況
島根県では、かけ廻し漁業を行う漁船の規模は10~19tがメインとなります。
操業方法は3種あり、詳細は以下の記事にて解説しています。
操業方法における違い
底引き網漁では、同じ規模の漁船であっても、操業方法により水揚げ金額に違いが生じてきます。
ここからは、底引き網漁で現在行われている漁法における水揚げの目安を紹介します。
※水揚げ金額は、年によって若干変動します。あくまで一例ですのでご注意ください
手繰船(10~14.9t)
- 水揚金額:約3,000万円~6,000万円
- 名称:1そう曳かけ廻し手繰船(10~14.9トン)
- 操業回数:3~7回/日
- 漁獲魚種:カレイ類、タイ類、ハタハタ等
- リール船(14.9t):5,000万円~8,000万円
- 名称:1そう曳かけ廻しリール船
- 操業回数:5~8回/日
- 漁獲魚種:カレイ類、タイ類、ハタハタ類
直巻船(14.9~19t)
- 水揚金額:5,000万円~1億1,000万円
- 名称:1そう曳かけ廻しリール船
- 操業回数:7~9回/日
- 漁獲魚種:カレイ類、タイ類、ハタハタ、ズワイガニ(19tのみ)等
水揚げ金額向上の理由
同社の水揚げが向上した理由は、大きくふたつあります。
ひとつは操業回数が増えたこと、もうひとつは活魚を含む鮮度保持の取り組みが市場評価されたことです。
操業回数の増加
同社は代船建造した際に、小型底びき網漁船(県知事許可)から沖合底びき網漁船(大臣許可)に変わっています。
これまでの小型底びき網漁では日帰り操業でしたが、許可が沖底船に変わったことにより沖泊り操業が可能となりました。
これにより漁場までの移動時間が削減され、操業回数が飛躍的に増加しています。
また船が14.9tから19tに大きくなったことで時化への耐性が高まり、自ずと出漁日数も増加することになりました。
このように、船を大きくしたことで複数の要素が相まって操業回数が増加し、結果として水揚げ金額向上に起因しています。
魚価の向上
水揚げ金額向上のもうひとつの理由として、「魚価の向上」があります。
島根県の小型底びき網漁船は、日帰り操業を行いますので全船鮮度の良い魚が水揚げされます。
その中で、沖合底びき船が鮮度勝負で魚価を向上させることは難しいと考えられていました。
一次冷却の導入
しかし、同社では漁獲された魚をすぐに冷海水槽に入れ、一次冷却を行います。
そうすることにより、他船と比べておおよそ10~20%高く取引されるようになりました。
また、温度管理できる活魚槽も設置しており、温度調整することでさまざまな魚種を活魚として水揚げしています。
活魚槽×イオンフィルター
上記写真は、西日本ニチモウで開発を行った「イオンフィルター」の有無による活魚槽の様子の違いです。
この泡は魚槽の環境が悪くなると発生しやすいとのことでした。
この泡は魚から発生したフンや粘膜などが原因であり、魚槽環境の悪化に繋がります(通常自然界では、バクテリアの働きにより分解され、水質が保たれています)。
イオンフィルターの導入により、一般的な日帰り操業の船よりもはるかに高い魚の生存率を実現できるようになりました。
最後に
今後、TACに底びき網漁業で漁獲される魚種が追加され、漁獲量が制限される見通しです。
これからの漁業に置いては、その中でいかに魚を高く売るかを考えなければなりません。
今回、ご紹介した祐生漁業部様の一次冷却もその一例です。
島根県以外の地区でも、さまざまな鮮度保持方法を用いています。
漁業のあり方も時代と共に変わっていく必要があるのかもしれません。
大漁漁獲ではなく、適量漁獲、適正価格(漁師さんが満足する価格)での販売が必要だと筆者は考えています。
公式LINEはじめました
海ペディアの公式LINEアカウントを開設しました!
最新の更新情報をお届けするほか、記事に関するお問い合わせやリクエストなども受け付けております。
また、友だち登録者限定のインターネット通販サイトも運営しております。
下記の友だち追加ボタンよりお友だち追加をよろしくお願いします!