定置網とは、沿岸域に漁具を設置し、来遊する魚を誘導して漁獲する漁法である。
日本各地の沿岸域で営まれており、その地の基幹産業となっている地区もある。
今回は定置網の操業方法を紹介していく。
目次
漁具について
本記事では、定置網で一般的な漁具である「落とし網(表層網)」を例に上げて紹介する。
沿岸域に来遊した魚に、壁となる「垣網」を認識させ、その後「運動場」、「昇り網」、「箱網」の順に魚を誘導して漁獲する。
定置網は受動的な漁具であるため、魚の入りやすさとともに、魚の逃避のしずらさを追及していく必要がある。
各部位の役割
垣網
垣網とは、運動場から陸側に向けて、直線状に設置されている1枚の網のことをいう。
来遊した魚は壁となる垣網に沿って泳ぐことで、運動場へ誘導される。
運動場
運動場とは、垣網に誘導された魚がはじめにたどり着く空間のことをいう。
昇り網に誘導する魚群を留めておく役割がある。
昇り網
昇り網とは、運動場の魚を箱網に誘導するための網。
運動場側の網を「外昇り網」、箱網側に入り込んでいる網を「内昇り網」または「じょうご」という。
外昇り網と箱網を繋いでいる部分を一般的に「三枚口」と呼ぶ。
箱網
箱網には、昇り網から魚を誘導し、網持ち(操業)するまで魚を留めておく役割がある。
操業の流れ
定置網の操業は、三枚口付近(外昇り網と箱網を繋いでいる部分)に船をつけるところから始まる。
内昇り側から箱網に入っている魚を箱網の奥に追い込んで魚を船に取り込む作業を行う。
追い込みは網自体を油圧機器でしめこんでいく方法、網に沿わせたロープを油圧機器で手繰り寄せることで網をしめこんで行く方法と大きく分けて2種類ある。
今回は網に沿わせたロープを手繰り寄せる「リング式」の操業を紹介する。
まずは網漁具の両端に沿わせているロープを海面から船に手繰り寄せる。
このロープをヤリと呼ぶ地区もある。
この作業は船のオモテ、トモで同時に行われており、このロープをキャプスタンで巻いていくことで、船を網の中で移動させることができる。この作業と同時に網漁具に繋がるロープも手繰り寄せる。
上記の写真のように船を配置し、船を箱網側にスライドさせながら操業を行っていく。
続いては、網に這わせるような形で仕立てているロープをキャプスタンで巻いていく。
この作業により網をしめこんでいき、箱網に入った魚を追い込んでいく。
網の締め込みを進めていき、網の最深部である魚捕部を吊り上げ、魚を船に取り込んでいく。
網を上げたあとは、取り上げた魚の選別を行う。
定置網ではさまざま魚種と大きさの魚が水揚げされるため、漁獲が多い日は大変な作業となる。
大型の魚や単価の高い魚は、船上で活〆作業、脱血、神経抜きなどの処理を行う。
水揚げしてすぐに丁寧な処理を行うことで、単価の向上につながるケースが多い。
中にはカツオに対して脱血、神経抜きを行う漁業者もある。
手厚く処理されたカツオは最高に美味しく、定置網で獲れた魚だからこそ味わえる特別な逸品だ。
帰港後
帰港後は、魚をさらに細かく選別、箱詰めする。
定置網漁業は漁師といえど、船での作業よりも陸での作業が圧倒的に多い。
操業後の選別作業は経営者のご家族らも参加し、総動員で行われる。
新しい取り組みの事例
定置網漁業の操業方法、機械は日々進化しているが、魚の販売やアピール方法も同じように変わってきている。
最近では新鮮な魚の様子をSNSで発信し、鮮魚ボックスの購買促進を行っている経営体もある。
物流やインターネットの発達により、新鮮な魚を漁師さんから直接買うことも当たり前になりつつある。
このような記事を通じて漁業に興味を持つ人、魚に興味を持つ人が増えることを願っている。
最後に
今回紹介させていただいた定置網の模型網は㈲有福水産様の息子さん(小学生)の夏休みの課題です。
すでに操業にも参加することもあるという、将来有望な息子さんです。
大変精巧な模型の資料提供、誠にありがとうございました。
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