ロープの販売を行っている中で、お客様から「これと同じようなロープをつくってくれ」とロープのサンプルを手渡されることがたびたびあります。
しかし、見た目だけでは正確なロープの種類、構成を判別することはできません。
今回はお客様の要望を叶える技術「解綱検査(かいこうけんさ)」について紹介したいと思います。
目次
解綱検査とは
解綱検査とはロープのサンプルを解体し、製品を判別することです。
直径やピッチ・重さ・繊維の種類・太さ・原糸の本数を把握し、ロープの種類と西日本ニチモウでの規格を判別します。
これによって規格を推定したり、製品はわからなくても同等品を特定することができます。
解綱検査の項目と方法
直径
まずはロープの直径を計測します。
ロープの種類で計測方法は異なり、3つ打ち、4つ打ち、6つ打ちロープの場合、ノギスで測定し、8つ打ち、12打ちなどのクロスロープはメジャーなどで周径(ロープの外周の長さ)を測って計算します。(周径÷3.14)
ピッチ
ピッチとは、1本のストランドがロープを1周する長さをロープと平行に測ったものをいいます。
ロープピッチはストランドの間にノギスを差し込んで測定します。
3つ打ちは3山、4つ打ちは4山、8(2×4)つ打ちでは4山のストランド間を測定します。
この数値がロープの硬さの目安となります。
目付(重さ)
目付とはロープ1m当たりの重量のことをいいます。
長さと重さを測定して1m当たりの重さを算出します。
目付の測定はピッチと違い、ロープ形状に関わらず同様の方法で測定します。
原糸構成の特定
ロープは原糸→合糸→ヤーン→ストランド→ロープと段階を踏んで製作しています。
ストランドの構成確認には、原糸~ストランドまでの全ての項目を含んでいます。
原糸はどんな素材を使用しているか、合糸、ヤーンは何本撚り合わせているか、ストランドはヤーンを何本合わせているか、合わせ方はどうかなどをひとつひとつ確認していきます。
まずはストランドの構成を特定するために、各層の本数とヤーンの構成を各層ごとに確認します。
ストランドはヤーンで構成されていますが、撚り合わせる際には層(側1層目、2層目、芯など)が分かれています。
側1層目とそれ以外で繊維の種類を変えている場合や、中のヤーンの本数を変えている場合があるので、詳細を確認する必要があります。
原糸の種類判別
最後に、あらゆる試験を行って使わている原糸の種類を判別します。
原糸の種類判別は複雑であり、見た目だけでは分からないことが多くあります。
以下ではロープに使われている原糸の特定方法の一部をご紹介します。
原糸繊度の測定
繊度とはデニール(d)やデシテックス(dTex)で表される単位であり、原糸の重さ・太さが分かります。
原糸の種類によって繊度が異なり、繊度を測定することである程度原糸の種類を推測することができます。
デニールは9000m当たりの原糸の質量(g)、デシテックスは10000m当たりの原糸の質量(g)です。
例えば1mで0.1111gの繊維があったとすると、9000m当たり999.9g≒1000gなので、1000d(1111dTex)です。
水に沈むかどうか(比重)の判定
原糸を水に浮かべることでも種類を特定できます。
真水の比重は1.0のため、それより比重が重い(数値が大きい)ものは沈み、軽い(数値が小さい)ものは浮きます。
沈む | 沈まない |
ナイロン | ポリエチレン |
テトロン | ポリプロピレン |
ビニロン | イザナス(UHMPE) |
ベクトラン(ポリアリレート) |
ギ酸に溶けるかどうかの判定
ナイロンなどの原糸は、ギ酸に漬けることによって繊維が溶解していきます。
漬け込んだ後に溶けるか溶けないかの変化を見て原糸の種類を判定できます。
溶ける | 溶けない |
ナイロン | ポリエチレン |
ビニロン | ポリプロピレン |
テトロン |
燃焼した時の判定
原糸の種類はロープを燃やしたときの挙動によっても判別することができます。
上の写真はテトロン繊維を燃やしたときの挙動であり、黒いススが発生しています。
原糸 | 挙動 |
ポリエチレン | ろうそくを燃やしたときのような臭い |
ポリプロピレン | |
ナイロン | 毛が燃えたような臭い |
テトロン | 煙と黒いススが発生する |
ビニロン | ゆっくり燃え、黄色の玉ができる |
製造規格との照合、提案
ロープの構成、原糸の種類などを特定したら、製造規格と照合し、当てはまる製品を提案します。
全く同じものを作る事も技術的には可能ですが、ヤーン、ロープ自体のロットの問題もありますので、基本的には弊社取り扱い品の中で同等品を提案することがほとんどです。
また用途を詳しく聞いたうえで、異なる素材でより良い商品の提案を行うこともあります。
「ロープ」ができるまでの工程を紹介!人の手が欠かせないその奥深さとは – 海ペディア (umipedia.net)
解綱検査の活用
西日本ニチモウでは、どのようなロープでも原糸単位から検査することで詳細を調べることが可能です。
今回はロープの解綱検査についてご紹介しましたが、網の種類と構成も同様の方法で特定できます。
「これと同じようなロープをつくってくれ」、「うちの網はあの素材じゃないといけない」などのご要望をお持ちの漁業者様、みなさまのこだわりを私たちが実現します。
ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
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