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美味しい魚を届けるために!魚をやさしく扱う最新技術とは【前編】

少し想像して欲しい。人間を無理やり水に入れたら苦しくて暴れると思う。では、魚を水から空中にあげたら?

魚が暴れることは想像に難しくない。

今回はそんな暴れる魚をやさしく扱えるようにした技術を紹介したい。

目次

  1. 空中で暴れる魚
  2. 輸出されるブリと装置の開発
  3. 魚を大切に扱う理由

空中で暴れる魚

顔面を叩かれることもある。

生きた魚を扱う作業はとても難しく、特に活〆作業はとても大変だ。

人は魚を暴れさせまいと抑え込むが、その腕はかんたんに跳ね返される。

小さい魚もクネクネすると抑えるのが大変。

このように、これまでは「魚は暴れるもの」であることが常識だった。

魚をおとなしくさせるには、氷水で冷やすか、木槌や棍棒で頭部を打撃するしかなかった。

輸出される養殖ブリと装置の開発

鹿児島大学水産学部は海も近く、非常にいい環境。*近隣のあるホテルにて撮影。

2014年、水産大学校とニチモウ㈱が考案した技術を実用化をする機会を頂いた。

鹿児島大学が主体として進めた事業で「養殖ブリ類のストレスレス水揚げシステムと大型魚全自動高速魚体フィレ処理機開発」への参加である。

この事業は各方面からご評価も頂き、参加者をさらに増やし、事業は「養殖ブリの輸出を促進するための人工種苗生産技術高度化及び高品質冷凍流通技術体系の開発」へと大きくなった。

水産白書のデータより著者作成。2019年のデータは対象基準が変わった。

当時から養殖ブリの輸出は右肩上がりで増えており、特にアメリカで高い評価を得ていた。

その後も養殖ブリの輸出は増え続けている。

色々な形状と電極を試した。

ニチモウグループが担当した開発は、魚のストレスを軽減させる水揚げシステムである。

具体的には電気で魚を鎮静化させる技術の開発だ。

写真のようにタモの内側に電極を取り付け、魚に電気を流すことで鎮静化させる。

鎮静化させるだけならばかんたんであったが、魚を骨折させずに鎮静化させることが難しい。

ブリは魚類の中でも特に筋肉が強い魚であるが、その強靭な筋肉が電気によって強く収縮し、自らの脊椎を破壊してしまう現象が頻発した。

※閲覧注意だが、見たい方はこちら

そのような現象が頻発する状況であるにもかかわらず、現場からの意見は骨折率ゼロ、不良品率ゼロを実現することであった。

骨折を発生させないためにさまざまな電気条件を試した結果、低周波のパルス電気に行き着いた。

また、魚体の大きさ、抱卵時期や海水温などでも最適な電気条件が異なることもわかってきた。

電気発生装置の前面。

今では、電圧、周波数、通電時間や昇圧時間など組み合わせは100種類以上となった。

当初、養殖ブリ向けで開発した装置であったが、電気条件を変えることによって、ギンザケやトラウトなどのサーモン類のほか、養殖のマダイとカンパチで対象魚種は広がった。

また、タモ式ではなく、マットの上で魚を暴れさせないようにする技術も開発した。

マット式ができてから、定置網など天然漁業への分野も開かれた。

魚を大切に扱う理由

魚体温上昇を防ぐため、各地で様々な工夫がされている。
魚体温上昇を防ぐため、各地で様々な工夫がされている。

電気で魚を暴れさせない装置の商品名は「FreezeFish」とした。

また後編で詳しく説明するが、暴れさせないことで魚体温の上昇を抑えるなど、様々な効果があるからだ。

魚を大切に扱うことは、味および鮮度保持につながる。

丁寧に扱った魚は、理屈ではなく非常に旨いと感じる。

その後の流通も丁寧に扱われるためなのか、丁寧な仕事をする人は最後までつながっているのか不明だが、おそらく科学的な根拠もあるのだろう。

また魚を尊厳し、流通させることも大切なことである。

雑に扱われた魚や、漁師が戦って強引に〆た魚は明らかに何かが違う。

先日FreezeFishを導入した方より、「労働負荷の軽減には大きな効果がありますが、何より作業者が魚を〆るという精神的な負担を和らげたことが大きい。」と感想を頂いた。

 

育てた魚、苦労して獲った魚を大切に扱うことは、鮮度保持にもつながるが、それ以上に魚に携わり、魚を大切に扱いたい方に貢献できたことは非常にうれしい。

魚を大切に扱う姿勢は、水産資源を無駄なく持続的に利用するための心構えのひとつであり、美味しい魚を消費者に届けるための最初の第一歩であると考えている。

後編では鮮度と品質にこだわる生産現場の様子をお届けするので、ぜひ知って頂きたい。

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