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【実録レポート】インドネシアの島で見た「海ゴミ問題」の現実

海ゴミは世界的に問題となっているが、島国の日本でも海ゴミは遠い問題となっていないだろうか。

普段海に馴染みのない方々は、海ゴミを目にすることが少ないかもしれない。

では、海で暮らしたらゴミはどのような存在なのか?そんな視点から考えてみた。

インドネシアへの視察

造船場と民家に囲まれたゴミ捨て場。本来は沿岸である。

「漁具を悪者にしないために」の記事を読んでいただいたFumikoさんから、インドネシアの南スラウェシにある小さな島のゴミ問題の調査、解決に向けた協力の依頼があった。

【海洋サステナビリティ】漁具を悪者にしないために

同島ではゴミ処理場もなく、村で頑張るには限界があるらしい。

とりあえず初めての依頼であり、島は大好きな私。ダイビング好きの今井と島に飛んでみた。

島での生活は限りなく海に近かった。

この小さい島に3,000人が住んでおり、人口密度は東京の大田区と同等らしい。

東京のようにビルはないので、人口密度が凄まじく感じる。

インフラは整っていない(夜間は電気使用可)ので、雨水をタンクに貯めてシャワー、トイレ、洗濯に使用する。

飲み水は購入する必要があり、どこでも同じカップ入りの水が提供される。そのカップは町中に散乱している。

島にはホテルがない。ホームステイ先の民家は海上生活でした。

食事は基本的にコメと魚。

それぞれの家は開放的で、話しかけてくれる子供は誰がどの家の子かわからない。

島の人々に大きな格差はなく、皆が平等に食べている印象だ。

ホームステイ先のご主人。色々な魚介を焼いてくれた。

島のあちこちで人が寝ており、あちこちで暇をしている。働きすぎの日本人とは対照的だ。

ホームステイ先の3人の子供がいるお父さんも、11月から5月の半年間は1か月の出稼ぎ以外は仕事をしないらしい。

インドネシアの離島が抱える問題

大規模な海藻養殖

さて、本題。

私たちに最も期待されている任務は、「海藻(キリンサイ)養殖で使うペットボトルの流失を防ぐアドバイス」であった。

海藻養殖は海ゴミが増える一因と考えられており、政府や都会人の評判が悪い。

これがキリンサイ。ペットボトルはフロートとしてリユースしている。

事前情報を得ていたので新しい漁具仕立ての提案を準備していたが、すでに改善されていた。

城戸さんが中心となって2023年にオンラインでプレゼン提案していた結果かもしれない。

新しい養殖資材。ペットボトルの種類で価格も異なる。

次にフロートにペットボトルではく、流出しずらい仕様の日本製フロートを使うことを提案した。ここで実情が見えてきた。

既存の海藻養殖のフロートとして使用するペットボトルは南スラウェシ(都会)で集められたものをわざわざ購入している。

島民は都会のゴミをリユースとしているだけであり、故意にペットボトル飲料品を買ってフローとして使用しているわけでもない。

漁具販売店の調査。フロート価格はペットボトルの20倍+運賃か?

養殖に使用して割れたペットボトルは海に捨てることはせず、約半年から1年で回収して交換している。

しかし、割れたペットボトルの処理場がない。

ゴミの埋め立て地及び宅地。この上に家が作られる予定。

島にはきちんとしたゴミ処理場がないので、島内にもゴミは散乱している。

島民で決めたごみ処理場は沿岸であることから、ゴミが海に流出することもあり、流れ着く海ゴミもある。

島外へのリサイクル品の販売、宅地の埋め立てにゴミを使用するなどの処理にも真剣に取り組んできたが、根本的な解決策がない。

都会で売られているペットボトル飲料

島でプラスチック製品は製造されないので、プラスチックは島外から持ち込まれる。

生活物資は船賃分で少し高い価格設定となっている。

しかし、島全体は海藻養殖もあり経済的に成り立っているので、都会から島への一方通行社会も成り立っている。

島のあちこちで干されているキリンサイ。

海ゴミ増加の悪者は、都会のゴミをリユースしている島民なのか?

それともゴミを排出し、販売している都会人か?プラスチックを生み出す製造会社か?それとも私たち日本人なのか?

この問題は他人ごとではなく、私たちは海藻養殖の恩恵を受けている一人である。

日本人を含む世界中の人々が、キリンサイから抽出されるカラギナンを歯磨き粉や食品製品に使っている。

圧縮した後の運びだし、処理が問題。

この島ではプラスチックの焼却処分はできない。

学校のサッカー場も以前は埋め立て地だったそうだ。

プレス機でゴミの減容も実施したが、有効な引き取り先がないため今は使用されていない。

心が広い島の人々

歓迎会をしてくれた村長(右から2番目)。40代前半で村をリードする。

大歓迎で迎えてくれた村長と現場視察へ向かいながら話をした。

(村長)「島にリゾートホテルを作ろうと思うけど、どうか?」

(海ぺ)「あれば非常に助かる!(一般民家へのホームステイは少し大変)」

(村長)「客は来るかな?」

(海ぺ)「今は来ないと思う。だけど、この島が世界一大変なゴミ問題を解決し、世界一綺麗な島になったら、世界中から視察団がくるよ」

(村長)「モチベーションが上がったよ。ありがとう。次は妻を連れてこい」

(海ぺ)「OK!(と言いながら、本当に難しいと思った。でも、実現出来たら本当にいい島になると確信した。)」

我々の目から見れば海にも陸にもゴミが多いように感じるが、昔と比べたら村はとても綺麗になったという。

色々と問題はあるが、常に前を向いている。

現場調査。ポリタンクもフロートに活用。

インドネシアは島と島を行き来している漂流民の国でもある。

人懐っこく、明るく、誰でも受け入れてくれる文化がある。

島民は心が広く、私たちの違う文化も色々と受け入れてくれる。

水筒も受け入れてくれた。けど、利用者は皆無であった。

私が無知であったため最初は島が汚れていると思っており、ペットボトルの使用も悪いことに思えた。

無知な判断は相手を悪く思ってしまう。相手の状況を知って、共に考えることを学んだ。

島に広がる色々な技術

別の島で見た木造大型船。木を組み込む技術はまさに伝統工芸。この技術もFRPに置き換わりつつある。

プラスチックは島に安全な水や食料を届ける。私たちもプラスチックの恩恵は受けており、それは平等であるべきだ。

あえてプラスチック利用拡大の問題をあげるとすれば、プラスチックというモノだけが広がり、それに伴う処理の問題やリサイクル手法などがセットになって広がっていないことだ。

これまで木造船であった島の漁船は、FRPに置き換わってきている。

3隻目のFRP船が作られていた。FRPが軽くて丈夫であることは皆知っている。

しかし、数十年後にFRP漁船の処理をどうするのか?それらの問題を目の当たりにし、経験している私たちは、最終的な処理方法を含めて技術を広めていかなければならない。

豊かになることを誰が止めることができるだろうか。

海ブドウの養殖も始まっていた。

島には従来から自然のものを有効に活用する文化がある。

流れつく海ゴミをはじめ、島の限られた資源で様々なモノを生み出してきたのであろう。

リサイクル、リユースは私たちが目をそらしている問題ではないだろうか。

タコ用餌木。ペットボトルのキャップを溶かして作っている。
プラスチック梱包資材から色々な製品を作り出す女性の活動。
欲しい方はご連絡ください。

島のためにできること

大学の教授、現地大学の先生、ジャーナリストでもあるNPO活動家と漁具や今後に展開について打合せ。

今回来訪のきっかけを作ってくれたFumikoさんを含め、私たちはインドネシアではまだ影響力をもっていない。

でも、色々な人を巻き込んで大きな動きを起こしたいと考えている。

現地の活動団体であるMACCA(高校、大学、ジャーナリスト、NPO法人で形成)とも連携し、できることから始めるつもりである。

まずは、平等な視点での報告書を国際機関に提出する。

日本の皆さんにも、今の生活が世界中の人々から支えられ、海ゴミは全くの他人事でないことを知って欲しく、今回の記事を作成した。

この島は海ゴミ問題を抱える世界の縮図のようであった。

日本でも焼却が規制され、埋め立て地がなくなればどうなるだろうか?

ハサヌディン大学ではシンポジウムに参加し、日本の漁業や取り組みを紹介。活発な意見主張は各人の意思の強さを感じた。

最後に一つ伝えておきたいこと、日本の技術をそのまま輸出することは解決ではない。

働きたいときに働き、家族や祈りの時間を大切にし、多くの家族に囲まれ、モノを大切に扱う、そんな生活が島にはある。

何が豊かであるか、これからはよく考える必要がある。

今回の調査協力は何もできなかったのに、得るものが莫大に大きかった。

この島にリゾートホテルができたら、是非とも訪ねて欲しい。ちなみに島はここです。

最後まで読んでくれて、テレマカシ(ありがとう)。

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