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【操業のリアル】島根県隠岐諸島のまき網船①

島根県隠岐郡西ノ島町にある有限会社共幸水産の第一千鳥丸(網船)に乗船させて頂いた。

同社では慢性的な課題である人手不足を補うために、特徴的な取り組みを実施している。

今回は同社の省力化への取り組みと人材確保の事例、そして実際にはたらいている船員の声をお届けしていく。

目次

  1. 島根県隠岐諸島のまき網船団の概要
  2. 省力化への取り組み
  3. 離島における人手不足の解決方法
  4. 現役漁師が語る「島と漁師の魅力」

島根県隠岐諸島のまき網船団の概要

隠岐諸島の船団は一晩に大量の水揚げが実施される

島根県の隠岐諸島には、千鳥丸をはじめ中小型まき網船が8ヶ統(7社)稼働している。

周辺海域は日本有数の好漁場であり、年間の水揚げ量が全国トップクラスの船団もあるほどだ。

主な漁獲対象はアジ、サバ、イワシであり、隠岐諸島における重要な産業となっている。

網地はナイロン網が主流。過去にイワシの脂でテトロン網が劣化したことがあった。

船団の構成は、網船1隻、灯船3隻、運搬船1隻、裏漕ぎ船2隻の7隻体制である。

網船は20トン未満で中小型に分類されるが、中型まき網では珍しく運搬船が2~300トンと大型であることが大きな特徴だ。

上述の通り水揚げ量が多いため、水揚げ港である境港では魚種の選別を船団ではなく加工業者が行うという。

省力化への取り組み

「ISANA」の導入

まき網の操業では、各船の船長が魚探やソナーの画像から集魚の具合を見極め、網を巻くタイミングを判断する。

この判断こそが、漁獲量を大きく左右する重要なポイントだ。

長年の経験が不可欠であり、的確な判断ができるようになるまでには長い年月がかかる。

共幸水産では、操業を効率化するITサービス「ISANA」を導入している。

船団内の漁撈機器情報をリアルタイムに共有できるようになったことで、判断のスピードと精度が格段に向上した

また操業時の機器の画像はすべて記録されており、後日に反省会などを行うことで、次世代を担う若手船長や乗組員の教育にも役立っているという。

「スクープマスター」の導入

隠岐諸島の船団では先述の通り漁獲量が多大であるため、水揚げ作業は非常に多くの人手を要する作業だ。

共幸水産では中小型まき網船では珍しい「スクープマスター」を採用している。

スクープマスターとは、運搬船の漁獲物の水揚げを補助する油圧機械である

スクープマスターの使用例

  1. タモ網の袋部を絞め、タモ網を魚槽へ移動させる
  2. スクープマスターを動かし、タモの角度を変え、魚槽内の漁獲物をタモ内に入れる
  3. タモ網の袋部を緩めて漁獲物を降ろす

水揚げは本来重いタモ網で何度も魚を掬わなければならず、人手と力が必要な作業だ。

沖から帰ってきたあとの疲れた身体で行わなくてはいけないため、船員への体力的な負担も大きい。

共幸水産ではスクープマスターを導入したことで、少人数でかつ負担の少ない水揚げ作業を実現している。

離島における人手不足の解決

(写真向かって左側:平木漁労長 右側:平木社長)

離島の水産業は資材購入や出荷の船賃コストをはじめ、本土以上に島の人口減少と高齢化が深刻だ。

そんな中、共幸水産では島内だけに頼らず、Iターン人材(出身地以外の場所に就職、転職する人材)を確保している。

水産業の人材不足が騒がれているのに、なぜ厳しい環境の島で人材確保ができているのか、共幸水産 平木社長に単刀直入にお聞きした。

記者「全国で見ても、これだけ新人漁師が集まってきているのは非常に珍しいことだと思います。なぜ、共幸水産には人が集まってくるのでしょうか?」

平木社長「隠岐島の西ノ島町が積極的にIターンの受け入れを助成してくれているね。また、全国漁業協同組合が協力している就業者フェアー(一般社団法人 全国漁業就業者確保育成センター主催)や、Webを使って地道に求人を出していることが結果につながっているんだと思う。」

平木社長「あとは情報をクリアにすること。Webなんかでは積極的に顔や写真を出して、どんな人が働いているかを見せる。給与体系とか福利厚生なんかも全部明記する。初めて漁師になる人は何もわからないわけだし、漁師なんかは怖いみたいなイメージがあるわけだから、その辺は意識的にやっているかな」

記者「Iターンだと定着率が心配されますが、御社の顔ぶれは変わらず定着しているようですね」

平木社長「面接の時点で、覚悟を決めて島に来い!と言っているので、覚悟が違うのかもしれないね笑。船員同士のコミュニケーションをとってもらうのが大事だと思っているから、不定期で食事会を開催して、リフレッシュとお互いの状況を把握したり、年に一度勉強を兼ねた社員旅行もやっているから、それが効果的なのかもしれない。Iターンで来た人には住宅も手配するしね。」

隠岐島は、行政と船団が一体となり人手不足の解消に努めていた。さらに福利厚生の充実や人材を受け入れる環境の整備をすることで、定着させていくことにも注力しているようだ。

またこちらは株式会社ライトハウスが運営するサービス「WaaF」を使って、共幸水産で漁師になった、新人漁師へのインタビュー動画である。

右も左もわからない「未経験者が漁師になるということ」とは何かを語っている。

現役漁師が語る「島と漁師の魅力」

社長に話を聞いた後は、共幸水産ではたらく愛知からのIターン就業者に話を伺った。

記者「漁師になる前は元々何をしていましたか?」

船員「もともと魚が好きだったり、人と違う生き方をしたいという思いがあったりして、中学生のころから漁師になろうと決めていました。ここで働く前は水産高校の学生で、実家がある愛知に暮らしていました。」

記者「愛知からはだいぶ遠いですが、隠岐島の共幸水産に決めた経緯を教えて下さい。」

船員「東京で開かれた漁業フェアで平木社長に出会い、仕事を体験させていただき、他の社員のみんなとも仲良くなれそうだと思い、ここに決めました。」

記者「仕事はどんなことをしていますか?」

船員「今は、網をたぐったり、機械で網を締め上げたりする仕事をしています。網の修理も行います。船員になりたてのときは仕事の流れもわからないので下仕事などをしていました。」

記者「漁師になって良かったこと、良くなかったことを教えて下さい。」

船員「漁師の仕事はキツイとは想像していたが、魚を獲るというやりがいは想像以上でした。自然が相手なので不漁の時もありますが、大漁だった時の達成感は他の仕事にはないものだと思います。一方で、島に来たことで地元の友達と気軽に会えなくなったことは少し寂しく思うときもあります。」

記者「Iターンで漁師になるときに抵抗はありましたか?」

船員「中学から漁師になると決めていたので抵抗はなかったのですが、やはり暮らしていく場所が離島ということや、これから本当にやっていけるのかなどの不安でいっぱいだったのを覚えています」

記者「島での暮らしは充実していますか?」

船員「6年住んでいるので親しい方は多く、漁のない日は釣りをしたり、家でギターを弾いたり、彼女と過ごしたりしているので、とても充実しているように思います。」

漁師になるということを中学のときから考えていた若い船員でも、島で生きていくということに最初は不安があったようだ。

しかし、共幸水産の他の船員たちを信頼していて、仕事へのやりがいも大きいため漁師として生きることにやりがいを感じている。

最後に

離島は不便と言われる事が多いが、「不便とはなんだろう…」と、隠岐の島に来るといつも考えてしまう。

大量の情報によって個人の価値観も多様化しているが、通信機器の発達により離島でも情報格差は少なくなっている。

今回のコロナ禍で「人間本来の豊かさとは何だろう」と考え始めている人が増えただろう。

重視する個人の価値は今後、さらに変化していと考えられる。

価値の基準が「お金」であった時代から「時間、やりがい、趣味、自然、安心安全」など、情報格差が少ないからこそ「価値観」が多様化している。

この様な時代の中で「漁師」という職業は「自身の価値」が高いレベルで満たされている職業の一つであると感じた。

特に今回取材させていただいたIターン就業者は、非常に充実感のある表情が印象的だった。

あらゆる産業における人材不足の問題は今後の日本では常に立ち向かうべき課題であり、同時に省人省力化に挑戦し続けなければならない。

われわれは海ペディア編集部は、漁具メーカーとしてこの問題解決に取り組んでいく義務がある。

そして漁師という仕事の魅力を、これからの時代により強く輝かせることに貢献していきたい。

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