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【操業のリアル】山口県まき網船②

山口県には6隻の沿岸まき網があり、主に萩地区に多い。漁期は4~12月であり、1~3月は休漁期間となっている。浮子綱の長さは600mまでという山口県独自の規制もある。山口県のまき網船団は資源保護の為、これらの規制に準じて操業を行っている。

また魚捕部の仕様が他の地区と異なり、落としを急にした三角魚捕を採用している

三角魚捕では縦環(魚捕の絞りに使用する環。他地区では絞り環や側環ともいう)を配置していないため、魚捕部の一部をオモテのウインチで引き込む方法をとっている。

三角魚捕の採用により魚捕部の網地が少なくなり、魚締めをスムーズに実施することで作業が省力化されている

従来の揚網スタイルを変えた「網捌機旋回装置」

他の地区の沿岸まき網では使用されていない油圧機器をこの船団は使用している。

網捌機を旋回させ、任意の方向で固定させる機械である。(マリンハイドロテック㈱製)

この機械の導入を決めた社長と、現場で使いこなす船員さんに話を聞いてみた。

従来の揚網スタイルがどう変わったか?

船員「揚網がスムーズになりました。従来の網捌機は動きがフリーのままクレーンで吊り上げられているだけだったから、揚網の状態に合わせて旋回させ向きを固定することは出来ませんでした。そのため、網に無駄な力がかかったり、ねじれたままの揚網されたりすることが当たり前でした。」

船員「網捌機旋回装置を使用すると、網裁機を旋回させることが可能で、網が網捌機に入る角度を調整しスムーズな揚網を実施出来ます。また、浮子方、岩方どちらかをグリップさせる角度にすることにより揚網のズレを調整できるようになりました。」

船員「網がねじれて揚網されている場合も、旋回を上手く使うことで、軽微なねじれであれば解消できる。これまでの揚網作業を大幅に改善できる機械だと感じています。」

なぜ導入しようと考えたのか?

社長「大型まき網船にて使用実績が多数ある機械であると聞いたのが購入のきっかけだった。導入前は従来のスタイルで操業出来ていたのだから、社内から『本当に必要なのか?』という意見もあったけど、いざ使用に慣れてみれば、この機械なしでの操業は考えられない。最近では操業時に旋回機能を使用せずに操業することはまずないね。常に細かな調整を行いながら揚網を実施しているよ。」

今後の操業スタイルについて

社長「時化により操業が日数が減少したり、資源量も減少したりしている昨今、省人省力化は早急に対処すべき課題だと思っている。網捌機旋回装置をはじめとした新たな機器の採用や、漁具の改善により、従来の操業スタイルを変えていくことで解決していきたい。」

大手ワイヤロープに替わる高強力ロープ「ウルトラインD-8」

続いては、当船団で大手綱として採用している高強力ロープ「ウルトラインD-8」を紹介しよう。

ウルトララインD-8は特殊な高強力繊維を使用しており、現場では大手ワイヤロープの代替品として活躍している。

こちらも実際に導入してどのようなメリットがあったのか、社長に話を聞いてみた。

大手ワイヤロープと比べてどうなのか

社長「当初は耐用年数に不安があったけど、実際に使っているとワイヤロープと同じくらいの耐用年数はありそうだ。今後も長く使い続けられるんじゃないかと思う。」

社長「さらに、ケンが出ないこと、軽くなったことなど、その他のメリットもあるが、自分たちの考える一番のメリットは『グリスを塗らないでいい事こと』。これによってウインチ周りがきれいなままだし、カッパも汚れないこれはすごく助かっている。」

今後はどのように使っていくか

社長「現在は大手綱のみで使っているけど、今後、その他の用途にも使用し、ワイヤロープを化繊ロープに、太物ロープをウルトラインD-8に変えていくつもりだ」

環綱の着脱を楽にする「オートシャックル」

オートシャックルとは、写真の赤い丸の部分の機械のことである。中央の穴にスパイキを刺しこむことで簡単にフック部分を開放できる。

こちらの船団ではパ―スリングと環綱の連結に浅野金属工業㈱製の「オートシャックル M型」を採用した。

一見小さな部品であるが、この部品が操業の効率化に大きく貢献しているという。

導入してどうだったか

社長「従来のロープでの固縛の方式と比べて、着脱がとても楽になった。はずす際はスパイキを用いて一瞬ではずす事ができ、取り付けも一瞬でできるようになったのが嬉しいね。従来のロープでの固縛、開放には一定のスキルが必要だったが、オートシャックルを使えば作業が簡単な為、新人でも作業ができる点もメリットかな。」

社長「ロープを用いていた際は、ロープが外れないという不具合が稀に発生していたけど、オートシャックルを取り付けてからそのようなトラブルはなくなった。」

なぜ導入しようと思ったのか

社長「揚網作業と並行して行う必要のある環綱とパースリングの取り付け、環綱の取り外しを省力化するために導入した。あと耐久性も高くて追加購入が少なくて済んでいるから、コスト面でも負担にはなっていないよ。」

最後に

今回の乗船では、業務効率化のためにさまざまな船団独自の漁具設計、機器が導入されていることがわかった。

われわれ海ペディア編集部では、引き続き全国各地のまき網船団に話を聞いていく予定だ。

(*本船団では膨張式救命胴衣をカッパの下に着用しております。)

他の船団ではどのように、どんな機械を使っているのか知りたいという漁業者の方は、お気軽に問い合わせフォームへご連絡をいただきたい。

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